愛情>理性(意外に脆い)



「瑞希っ、見てるか?そのちっちゃい目かっぽじってよくみろよ!」
まるで子供のようにはしゃぐ真田を今すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られる。 が、そこはぐっと我慢と堪えて
「……見てる」
「なぁんだよっ。感想それだけ?」
つまんねぇの、と少しいじけたような仕草。正直、花火よりもあなたのほうが気 になります。可愛いという自覚はありますか?自覚なしの誘惑が一番手強いのを 斑目は知っている。
「何笑ってんだよ?またバカにしたろ?」
「……してない」
「いーや、あの笑いは絶対そうだ!」
酒が入ってる(真田のみ)せいかやたら絡んでくる。まだ一缶しか開けていない。
(弱いなら飲まなきゃいいのに)
斑目はそう思うが、止めないのには理由がある。酒癖が悪い真田はとにかく絡む 。絡んでいつもとは違う一面を見せてくる
。 目の前でベランダと乾杯しはじめた真田。
(もう、止めた方がいいかも・・・)
斑目は真田の暴走を止める方法を知っている。
「なぁ、ホントあったまにくる……少しかっこいいからってバカにしやがって」
「……ちょっと可愛いからってすぐ誘惑して……新手のイジメ?」
真田の言葉を文字り、背中越しに抱きしめる。
「はぁ?!何だよっ!イジメられてるのはオレだろ?せっかく一緒に見てんのに 何にも反応しねぇし」
「すねてるの?」
「そうじゃねぇよ……ちょっと寂しいだけ」
真田の言葉が仕草が愛しい。斑目は真田の肩越しにうなだれた。
「な、なんかしたか?」
焦る真田に
「無自覚に誘惑しないで。理性がもたない」
「なっ……」
酒のせいではない赤さが増す。頭上では花火の散る音が響く。触れた唇が少し開 く。斑目は舌先を忍ばせる。その行為にまるで初めてのような反応をみせる真田 。


(この人はどうしてこんなに誘惑するんだろう…)

(これ以上埋まらないぐらいあなたでいっぱいなのに…)


腕の中で甘い顔をしている真田をどうしたいのかと言われればそれは、ひとつで。 あんまり怖がらせるようなことはしたくない。けど、そこは若いからで許してく れないかな?そんなことを考えたら頭よりも先に身体が動いた。
「な―――何すんだよっ!ちょ―」
「やることは――ひとつ。自分のせいだからね…」
無自覚なのも魅力的だけど毎回これじゃあ理性が幾らあっても足りないから。斑目は少しばかり脅しかける。
「覚悟して」
それはもうとびきりの甘い囁き。その声に真田は瑞希の胸に顔を埋めることでし か返事が出来ないぐらいになっていた。
「いい…返事…」
と、ベットに倒しながら瑞希は真田の首筋に唇を落とした。

とびきりの愛情を 込めて。