とりあえず、もう一度
オレは一体どうした?どうしてこんな風になってんだ?
……翼がオレのベットに
………あー、どうする?どうした?
草薙の頭は朝から大混乱を向かえていた。何故なら、裸の真壁が隣で眠ってる。
更には自分も裸だった。何故こんな風になっているのかを思い出しても何もでて
こない。
(……落ち着こう。落ち着いて考えればわかるはずだ)
草薙は昨日のことを順序立てて考える。
昨日は久々にヴィスコンティのライブに行った。B6メンバー全員揃って行くのは
久しぶりで盛り上がっていた。そして打ち上げに参加して……
(から、オレはどうした?)
そこまでは思い出せる。しかし、打ち上げに参加した後がまったく思い出せない
。
「…あー、クソッ」
と、草薙は頭を覆う。この状態ということは、もしかするともしかの可能性もあ
る。それを考えるとショックで仕方なかった。
(こんな形じゃなく、きちんとした形で翼に伝えたかった)
草薙はいつからかはっきりしないが真壁に友情とは違う形の感情を持っていた。
明らかにそれは恋愛感情で。それを伝えてしまうとことによってこの関係が壊れ
てしまうのを考え、密かに諦めるのを自分自身が待っていたのだった。
(こんなことになるんだったらまだ告った方がよかった)
そう後悔しても後の祭りというやつで。取り合えず色んなことを考える方が先だ
。もしかして同意の上での行為だったとして自分が覚えてないという状況は避け
たい。と草薙はベットからでる。カーテンを開けると日差しが眩しく気持ちいい
。伸びをしてそこら辺に落ちているシャツを羽おる。
「ん……朝、か?」
「つ、翼?」
もう起きたのかと草薙は焦る。まだ何も考えてない。取り合えず顔を見ず、背中
越しの体制を取り
「あぁ、も、もう朝だな」
とぎこちなく答える姿は何とも滑稽だっただろう。ベットが軋む音がする。身体
を起こしたのだろう。その後の反応を草薙は待つ。が、まったく何もない。恐る
恐る振り返ると真壁が頭を抱えていた。
「どうしたっ?翼」
思わず駆け寄る。何だか振るえてるような気がした。隣に座り、頭を撫でる。
「…翼?」
「…一。オレはどうして…」
真壁の声が聞き取れない。
「翼?なんて?」
草薙は真壁に耳を寄せる。
「…こんな形で知られるぐらいなら」
「?つば…っ」
草薙の目の前の真壁が近い。頬が痛くて、首が曲がってる。そして唇に柔らかい
感触。
「こんなことになるぐらいだったら早く言っておくべきだった…sit…」
「つ、翼?」
「…一…I love you」
「えっ?」
「What's?ナゼ聞き返す?」
「そりゃ、聞き返すだろうがっ」
「こうなってしまったからにははっきり言っておく」
「こうなったってどうなったんだよっ?」
「この状態だ、想像はつく」
やけに冷静な真壁がはっきりと口にする。確に好きだと。それだけで草薙はかな
り動揺していた。自分はいざとなるとこんなにもへたれになるのかと少しがっか
りもしている。だが、一つはっきりとわかったことがある。……草薙も真壁も昨
日の夜の記憶がない、ということはもしかしてと慌てて携帯を探す。すぐにリダ
イヤルを押す。すぐ出た声はよく聞き慣れた声。
「なぁんだよーなぁ。もう気付いちまったんかよっ。つっまんねぇな」
「……やっぱりオマエかよ、清春」
「オメーら見てっとコッチがイラッとすんだよっ。オゼンダテしてやったんだか
ら無駄にすんなよっ」
「ちょ……清は……るって、切りやがった」
何だか気まずい空気が二人を包む。全てが勘違いでしかも真壁に到ってはまんま
と仙道の悪戯に引っ掛かり、告白までしてキスまでしたのだ。気まずくて当然だ
った。うなだれる二人は暫く動けずにいた。そして最初に口を開いたのは草薙だ
った。
「あのさ、翼。さっきのことなんだけど、さ」
真壁は少し身体を振るわせた。何も答えない真壁の背中に向かって草薙は話を続
ける。
「つか、オレも好きだからな」
――――――だから、取り合えずもう一回キスしてみないか?
そう誘う草薙の声が響いた。…………それと同時に二人の耳に仙道の笑い声が聞
こえた気がした。